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投稿者: 兵庫県宍粟市一宮町 小川建築 代表小川芳治
世界最高峰だったはずの日本建築はどうして地に落ちてしまったのか?大きく変わり始めたのが明治文明開化で明治時代に西洋の文化が入り、制度や習慣が大きく変化し「西洋のものなら何でもよい」という考えすら出ていた時代、西洋の学者が、貫と差し物を主とした建物を全面否定し現代の筋違いと金物に頼る工法に切り替えられ現代に至る。
明治時代以降、拝金主義的な世の中になり日本人の質が劣化すると同時に建築の質も劣化した。建築は住まい手の人格が出ると言われ、お金と建築は密接に関係している。
建築の要になる構造材、現代日本で多く使われている材料は、大きく三つに分けられる。一つは、自然界にはない高温で強制的に乾燥させた「人口乾燥材」、
二つ目はボンドで固められた「集成材」、三つ目が私が使う「自然乾燥材」だ。
このうちの一つ目の「人工乾燥材」は高温で熱しすぎて細胞が死んでいるので 木の形はしているがもはや木ではない 。
二つ目の「集成材」はボンドの耐用年数の問題、室内環境の悪化、使い終えた後はボンドが付いている為薪にもならず、産業廃棄物になるしかない。
現代日本の住宅のほとんどが人工乾燥材と集成材が使われている。
なぜ、良くないものとわかりながら、このような事が横行するのか?やはりそれは、住まい手や自然環境を無視し、利益優先の我利我利な商売をするビルダーが多いことを意味する。
私が住む兵庫県宍粟市は、市の面積の9割以上が森林で、そのうちの7割以上が針葉樹の植林された山だ。木所の宍粟市だが私が材を仕入れるのは他の地域から仕入れている。なぜなら、この地域だけ異様に高いからだ。できるだけ低価格で高品質な家を提供したい私からすれば高価な材を買うに及ばない。しかし、身近に木が豊富にありながら、他地域から無駄に燃料を焚いて材を仕入れる事に違和感を覚えていたが、去年ようやくWood-Mizer製材機を導入した。これにて、地域の材を自由自在に操れる環境が整った。
自社に利益を残しながら、お客さんにできるだけ低価格で材木を提供するには、やはり、仕入れを安くしないといけない。この冬は次に取り掛かる改修工事に向け、約35㎥ほどのの丸太を仕入れ、実質一カ月ほどかけて製材をした。
製材された材木は、約一年間かけてじっくりと乾燥する。
300Φの丸太で4寸×8寸の足固めをとるのだが、製材賃と製品代金でとんとん。
辺材を化粧材か下地材に利用するのだが、この辺材を上手く取りまわさないと利益は出ない。辺材利用は大工なのでお手の物、どこにでも利用できるので、大工が製材機を持つことで、そつなく材料を利用でき収益も上がる。
そつがないと言えば、辺材のさらに辺材の皮の部分は、薪ストーブや薪ボイラーで薪エネルギーとして利用する。ウチでは薪や薪ストーブと薪ボイラーを取り扱っている。辺材薪は自家消費はもちろん、薪ストーブの焚きつけや、風呂炊きの燃料としても買って行かれるお客さんがいる。
丸太から、構造材をとり、その辺材で造作材をとり、そのまた辺材で薪をとる。すべてに販売ルートがあるので、まさに無駄がない商売が成り立っている。
この度、大量の丸太を製材し感じた事は、製材で生業づくりができると考える。例えば、一人作業で丸一日作業すれば、最低1.5㎥~2㎥の丸太は製材できる。製材を外注に出したとすれば、1.5㎥~2㎥なら3万円~5万円はかかるだろうか。そう考えると製材業としても通用するように思う。建屋は別にして、製材機と鋸の研磨機を買っても約200万の初期投資で製材所が開業できる。
販路がしっかりすればの話だが、例えば、木を伐って市場に売って生計を立てている自伐林業家の方が製材をすれば、材の仕入れが極端に安いので収益を見込める。私は大工なので、消費者がどんな材が欲しいか、製材機の据え方や材をとりまわす動線、材のストックの仕方等々、いろいろとアドバイスができるので問い合わせ頂きたい。
鋸刃は製材機の要で切れ味はとても重要性だ。 普段から刃物を切らす仕事をしている私からすれば、Wood-Mizer製材機の刃の付け方が正直なところ気に入らない。出荷後の刃で製材できる丸太も300Φの桧で5本以下が限度だが、自分で目立てをし、きちんと一定のアサリを出してやれば、300Φの桧なら、10本からすれば15本は製材が可能になる。 目立て次第で2倍~3倍の長切れが可能になる。
Wood-Mizer製材機 の刃は特殊なので、その辺の目立て屋さんでは研いでくれない。オプションで15枚セットの刃が販売されているので、15枚一気に使い切り、その後にまとめて目立てすることにしていて、研磨機の調整が出来ていればの話だが、1枚の帯鋸を研ぐのに15分も掛からない。15枚まとめて研いでも半日で終わるだろうか。製材機を買われたら研磨機もセットで購入されるのをお勧めする。
一般的に材木を購入するには、川上から川下までのいろいろな業者の手をくぐってお客さんの元へと材が届く。川上から川下まで行く間に、実際のところ一番要らない中抜きの商売も存在するので、お客さんは不要なお金を支払っているように感じる。
しかし、大工や工務店や林業家が製材機を手にすれば、材になる途中の工程の中で生まれる無駄も減らすことができ、適正価格でお客さんの元へ材が届くようになる。売り手は仕事が増え利益も生み、買い手は良材が低価格で手に入り、身の回りの地域材が動くことで山の手入れや整備も進む。Wood-Mizer製材機は、近江商人の商売の基本になる「三方よし」の商売が可能になる機械だ!
資本主義も行き詰まりを見せ、先進国で初めて人口減少する現代日本。空家も増え、新築着工件数も減った今、これまで分業化された職業は淘汰され、これからは一つの職業がいろいろなパートを受け持つ時代が来るだろう。そう考えるとWood-Mizerはそれを先取りした革命的な機械で、どん底まで落ちた日本建築も良い方向に巻き返すはずだ!